研究内容

味覚情報の伝達や修飾に関わる神経細胞・ネットワークの解析

舌の上で味を感知するセンサーとしてはたらく味覚受容体の研究は2000年初頭からこれまで多くなされてきました。これに比べ、脳内で味を伝える仕組みの理解は遅れていました。そこで、私たちは光遺伝学・化学遺伝学などの神経活動操作ツールと装着型微小顕微鏡を用いた活動測定ツールを遺伝子組換えマウスに対して用い、甘味とその美味しさの情報を選択的に伝達する神経細胞を発見しました(Fu et al., Cell Rep. 2019)。また、「空腹は最高のスパイス」・「空腹に不味いものなし」と言った諺や格言にあるように、空腹が味覚に影響することは経験的に知られていましたが、その仕組みは不明でした。私たちは、脳内の視床下部にある食欲を生み出す神経の役割に注目することで、この変化を生み出す神経ネットワークの特定に成功しました(Fu et al., Nat. Commun. 2019)。糖尿病や肥満などの代謝疾患、あるいは、精神的ストレスにより、味の感じ方が変化することが知られていますが、その原因はほとんどわかっていません。そこで、現在は、これまでに見出してきた味覚伝達の脳内メカニズムとこれら疾患との関係を調べています。

 

参考:

甘味およびそれに伴う心地よさを選択的に伝える神経細胞の発見

URL: https://www.nips.ac.jp/release/2019/05/post_389.html


空腹に伴い味覚を調節する神経ネットワークの発見

URL: https://www.nips.ac.jp/release/2019/10/post_402.html